Concept‎ > ‎

先代シェフ 竹村早雄のこだわり(2008年執筆)

健康について
ごく普通に穏やかに幸せに生活していて病気になることもありますが、無理で不自然な暮らしを長く続けてその結果完治の困難な重い病気に罹ることもあります。

昨今さまざまな“健康法”が持て囃されて流行ってもいますが、極端な健康法(?)を妄信しないで、身体と対話なさってご自分に合った食生活を実践なさることがなによりです。

賢い身体と丈夫な頭
現代社会では賢さや勉強やキャリアといった頭の良し悪しや仕事上の経験などが要求され、かなり頭脳に偏った暮らしをしすぎていますので、生活や仕事で行き詰った時などに、“つい習慣的に”頭脳だけで結論を出そうとしてしまします。
しかし良く考えると、私たちは人間という名を自分でつけていますが一種類の動物ですから、生理に反した無理はできません。神経をすり減らして悩んでおいでの殆どは、この思い違い(感じ違い)のように思えます。考え方を変えて、、と思いますが、この変える手だてを見失っておいでになるようです。
大脳は大きいですが小脳を覆う表層組織なので、食べて寝て子孫を残すという動物的身体の特性が健全に機能してくれて、初めてシャープに機能してくれます。
自分のほとんどを占める“身体”を普段から大切にして、運動や郊外の自然に触れるなどすることや、身体が喜ぶ食事をしっかり摂ることが、健康に暮らすためには重要なことです。身体の一部の頭脳を酷使して身体に無理をさせてはいけません。
もちろんストレスも現代は多いですから、大脳は優秀であるに越したことはありません。しかし優秀であるだけでなく打たれ強くもなくてはいけません。『賢い身体と丈夫な頭』、これが現代で健康に暮らすには必要なことではないでしょうか。

食品添加物、保存料など化学薬品…
 難しい問題ですが、化学調味料がどういけないのかについて多く意見がありますが、私は科学者でも識者でも厚生労働省職員でもありませんので、料理人として体感していることだけをお教えします。
ノドが乾くということ
 塩分が多い料理を食べてのどが渇くと思っておいでの方が多いですが、添加物の濃度も大きく関係しています。どういう化学薬品という特定の名を示せませんが、化学調味料などの異物を多く摂取すると身体は反射的に対外に排出させようとしますから、食事の後数時間で非常にのどが渇くということが起こります。あの料理を食べるとノドが乾く、そうお感じになっているものがあるとすれば、それは塩分だけではないということをぜひとも知っておいて下さい。
過度に食品添加物や化学薬品保存料や防腐剤を多用した食品を摂取し続けると、ある一定量のところで身体はパンクします、つまり病気を発症する危険があります。そうなると、あわてて正しい食事になさっても、病気ですから治癒は大変難しくなります。

濾過式の浄水器を使っています
最近は調理の便宜上、濾過式浄水器で10リットルタンクに溜め置きして調理に使っていましたが、工事で設置スペースができましたので、改装に合わせて現在はマルチピュアの業務用浄水器を設置しています。

食について
オーガニック食材の問題点
オーガニック食材には生産の量的限界がありますから、需給アンバランスで価格は当然高価になります。最近は裕福な(国内外を含めて)方々が安全な食材をたとえ高くてももお買い求めになる傾向が強くなっていますが、現在地球上の人口は65億人を突破しましたので、現代社会人口の食の必要充分量を有機無農薬野菜ではまったく賄えきれません。これからも間違いなく有機、無農薬、天然などの安全な食材は更に価格が高騰する傾向が続くことでしょう。

当店が抱えるジレンマの一つがこういう問題です。裕福でないと安全な食生活を送れない。大変大きな解決が困難な問題です。レストランとして採算を取るのが難しいのですが、ビュッフェランチは1500円、夜はアラカルトもご用意して、なりべくお客様のご予算に応じて楽しんでいただけるように努力してまいります。

ですから皆様もあまり畏まって静かに黙々とお召し上がりになるのではなく、ごく普段の食事という感覚で当店の料理は楽しくお召し上がりいただきたいと思います。健康のためとかあれこれ考えながら、しんみり召し上がっていてはせっかくの料理がもったいないですし、料理から元気ももらえません。オーガニックレストラン・ナートはカジュアルな街の食堂であり続けたいと願っています。

ナートの食材
仕入れに対する姿勢、エネルギーのかけかた
 こう調理を習ってきたので、根菜や葉物や魚介はこう調理して、と決め付けていると、ナートの厨房の仕事は立ち往生しまいます。毎日欠品だらけだからです。献立に必要な食材がいつも満足に揃わないのです。欠品は日常的です。それをカバーする臨機応変の調理技術がオーガニックレストラン・ナートの調理場では要求されます。無い、届いてない、入荷しない、それなのに料理注文やご予約は入るのですから大変です。オーガニックレストランの仕入れは、通常のレストランと大きく違って仕入先が多方面にわたりますから、調理と同等以上の手間とエネルギーが必要になります。仕入れ面では、面倒なことはいろいろとあります。一つは仕入先の生産者、担当者の人柄の問題があります。有機野菜を育てている、扱っている方々の考えはとても大切で、少々インチキな野菜でも売ってやれという悪質な問屋さんなどが間に入るととんでもないことになります。また有機だからといって鮮度の落ちた野菜は使えませんから、生産者の方に申し訳ありませんが、仕入を断ることもあります。

都会の野菜と田舎の野菜はちがう?
ごく普通の新鮮で身体に良い食材を使った料理をお客様にご提供することを、オーガニックレストラン・ナートは開店以来10年以上東京の九段で続けています。オーナーシェフの竹村早雄は、ある理由から開店以来和歌山の白浜の自宅と東京とを往復する暮らしを開店前から続けています。ですから青山などで売られている有機無農薬野菜と、田舎の農協で並んでいる野菜とどちらがどう優れているか、実際に食べ比べてその違いを知っています。都会の人は田舎の人を文化的な面で低く見がちですが、農薬を使って農業を営んでいる農家の方はその毒性を実際に体感していますので、農協婦人部の方々が市場に出すホウレン草やキャベツなどと言った野菜には、かなり優れた野菜が多いのです。買ってみればわかりますが、葉の間から青虫がこんにはと出てきます。婦人部のこだわりの野菜に限定すれば、都会の野菜VS田舎の野菜では、田舎に勝利の軍配があがります。鮮度も良ければ農薬も使っていないのですから、圧勝です。ナートではこの野菜をかなり使っています。

ナートの野菜について
レストランとしては裏で有機野菜を栽培して店の調理に使うことなどできれば、最高の鮮度と美味しさをお楽しみいただけますが、東京ではなんともはや実現不可能です。とりあえず根菜などを活かしたまま調理するため、ナートの調理場には大根やニンジンなどは泥付きのまま保存しています。こうしておくと野菜は一定期間生きていますので、この程度が精一杯できることです。
こだわりの天然鮮魚と調理方法
 当店は野菜だけでなく、天然魚介や地鶏などの食材にも大変こだわっています。このコーナーは定期的にオーナーのこだわりを掲載していきますので、今回は主に野菜についての情報を中心にいたしましたが、次に掲載するのは魚介や地鶏について詳しくご紹介いたします。鮮魚は仕入れルートを見ていただくとお分かりいただけますが、全国の産地から刺身用の鮮魚を毎日仕入れています。

ナートの魚介について
野菜も魚介も際立って新鮮で美味しい食材を調理いたしますので、私たちは持っている旨みと美味しさを損なわない調理を心がけるようにしています。
魚料理10種の中に京風の炊き合わせという料理がありますが、これはアクアパッツァと実はまったく同じ調理方法をとっています。お召し上がりになって、同じ?と不思議にお感じになるほど味はかなり異なるのですが、調理の違いは調味料だけです。アクアパッツァが不思議な水という呼称を受けていますが、炊き合わせも充分に不思議な水です。〔アクアパッツァ:ドライトマトとアンチョビとオリーブオイル。炊き合わせ:岩のリ、岩塩、昆布。〕こうなります。一度是非両方の魚料理をお召し上がり下さい。同じ調理方法ということについてはレシピのコーナーでいずれご紹介いたします。ポアレなど切り身のソテーの魚料理もご用意していますが、野菜料理も同じですが、魚料理も食材全体を使って調理したものに美味しさと栄養とがこもります。今は橙ポン酢とバターのソースを用いていますが、ポアレの場合アラのソースを使用した方が本当の元気をもらえる美味しさが出せます。

江戸時代であれば天然有機無農薬は当たり前
 野菜は特に鮮度をそこなわない、加熱の時間にこだわった調理をいたします。例えば茸のヌタなどは、栄養が損なわれないようにまったく生の茸を用いることがあります。同様に魚料理も前菜にお造りやカルパッチョを必ず一品ご用意するようにしていますが、お刺身は鰹のようにクセの強い赤身魚をオリーブやレモンでカルパッチョにしますと、平目などのようなさっぱりした白身魚よりもよっぽど旨みの強い前菜になってくれます。このように個性の強い素材には、シンプルで思い切った工夫を加えてクセのある味を旨みに変える工夫もいたします。

ナートの食材は安全が当たり前で、その新鮮で美味しい食材をどう調理するかが私たち料理人の仕事の醍醐味であり、お客様にこれは美味しいとお褒めを頂いた時に苦労と努力が報われ、喜びも大きなものとなります。
このコーナーではこだわりを掲載していますが、レストラン営業店内ではこういうこだわりについて、調理場からはあまり申し上げません。レストランですから美味しいか美味しくないかがすべてだと、考えています。現代ですから、当店は仕入れに苦労していますが、今が江戸時代とお考え下さい。すべて天然の江戸前の鮮魚が豊富に入荷し、そしてすべて有機無農薬の野菜がたっぷり調理に使用できるのです。オーガニックだ、天然だ、と御託を並べても、料理のスタートラインは食材が揃ったところからですから、現代だからこその苦労があるにせよ、調理前の仕入れの苦労話はレストランとしてあまり表に出したくないところです。料理人は仕入れた食材を丁寧に上手に調理して、お客様に喜んで頂き、そして元気になってお帰りいただいて、明日からの仕事の活力の糧としていただければこれ以上の喜びはございません。

産地から直送される刺身用鮮度の魚介
 毎日天然魚介を能登や三重などから、刺身にできる鮮度の魚介を仕入れていますので、各地の旬の味をご堪能いただけます。魚は呼び名も各地でことなりますが、ナメラー、ソコズリなど呼び名も風変わりな魚が届きますが、何のことはないハタ(アコウメバル)や舌平目です。和風のお鍋にするハタハタなど、当店ではイタリアンのアクアパッツアにしてお出しすることもございます。

調理方法は和食とイタリアンが中心
 イタリア料理をしつこいと思い込んでらっしゃるとしたら、それは間違いです。オリーブオイルは油の中で唯一果実から絞りとる油ですから、大変フルーティーです。これは調理していて分るのですが、魚の脂と大変近いものがあります。魚脂は低温(海中)で固まりませんから、その点も良い脂とされているのですが、脂の乗った真鯛の塩焼きにエクストラバージンオリーブオイルをたらしても、食通の方にもなか分らないと思います。
周りが海という環境が日本とも似ていますし、食を大切にする長い歴史と文化の国ですから、実はとてもヘルシーなのです。
当店では金沢の合鴨の治部(ジブ)煮などのように、もちろん和食料理を多くご用意していますが、同等程度にイタリアンのメニューも多くご用意しています。

旬の魚介の美味しさ
 春になれば産卵を迎えた真鯛や鯵に脂が乗って、身もふっくら丸みを帯びてまいります。秋から冬は能登のブリ、真冬は福島の常盤物と言われるズワイ蟹、真夏は南紀から身のしっかりしたコショウ鯛など、年間を通じてそれぞれの産地から多用な魚介が直送されてまいります。ナートは長年産地との取引を続けていますので、日本国中に張り巡らした仕入れのネットは一財産となっています。

和菓子からフランス菓子まで
デザート類は調味料類に添加物のあるものは使用せずに、砂糖も黍糖や甜菜糖を用いてデザート類をご用意しております。お食事と、適度なアルコールやお飲み物、甘味をお楽しみ下さい。
フォンダン・ショコラなどは糖分の多いこってりしたデザートですが、フルーツのシャーベットやハーブティとフルーツのゼリーなどのカロリー低めのデザートや、油脂を使わないお豆腐のケーキ、胡麻風味のブラマンジェなどの当店らしいヘルシーなお食後もご用意しています。

不健康を慎むのが健康です
どういう訳か最近日本のお客様はあまりお酒を召し上がりません。百薬の長、般若湯という言葉があるように、日本では古くから食事と一緒にお酒も楽しんで来た歴史がありますので、最近の急なアルコールを忌避なさる傾向にはいささか不安を覚えます。お水でコース料理は健康的とは言えません。
“流行の健康法”に則って食事なさるかたが多いようにお見受けしますが、このサイトでも書いていますように、ご自分で≪賢い身体≫を意識なさって、あまり極端な食事方法を長お続けにならないようご注意いただければと思います。重い疾患などに繋がる危険さえ感じます。

上質の醸造酒・ワインや日本酒
当店は栄養バランスを考えた野菜や魚介料理をたくさんご用意していますので、ワインなどの醸造酒を少しお召し上がりになりながら、お食事をお楽しみください。魚に合うあっさりした飲み口の赤ワインから、チリのコノスルなどのフルボトルまでオーガニックワインを種類多くご用意しています。
アルコール類は最近やっとオーガニックも美味しいものが増えてまいりましたが、まだ安全、有機というだけで味が今ひとつのワインが多いのが現状です。一般のワインもイタリアやフランスだけでなくいろいろ取り揃えていますので、各国の醸造酒をお食事と一緒にゆっくりどうぞお召し上がりください。


ナートさんはイタリアン?何料理?と時々お尋ねを受けますが、安全な食材を使った料理、オーガニックレストランと申し上げてもなかなかご理解いただけません。つまりこれだけの食材を揃えて各種多用な調理をするレストランは他にあまりないからだろうと思います。


オーガニックレストラン・ナートはこれからも食材にこだわり、長くお客様皆様に喜んで頂ける料理をご提供する仕事に勤しんでまいるつもりです。どうぞ長くご贔屓を賜りますようにお願い申しあげます。


−レストランナートの創業者であり先代シェフの竹村早雄は2008年4月11日に永眠しました。その後6年間、彼の思想を受け継いだ夫人とスタッフにより、レストランは運営されていました。−


サブページ (1): 竹村早雄のつぶやき